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畑のやさいが育ってきたよ
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1. 基本情報

イラストレーター・作家・デザイナー「あけたらしろめ (Sirome Aketara)」。1988年生まれ、2児の父。拠点は札幌(北海道)。モノクロームの線画を軸に、キャラクター「シロとメロ」を2013年から描き続けている。

経歴:

  • 多摩美術大学 プロダクトデザイン専攻 卒業(2011年)
  • 音響機器メーカー TEAC でプロダクトデザイナーとして勤務(2011-2018年)。開発チームのデザイン担当として、ポータブル録音機「DRシリーズ」などに携わる
  • デザインスタジオ「ブルーパドル」入社(2018年、ギルド化に伴い独立)
  • 2018年よりフリーランスのイラストレーターとして独立。東京を経て2020年より札幌拠点
  • 2013年より双子のキャラクター「シロとメロ」をモチーフにした作家活動を継続
  • 2024年より育英館大学 非常勤講師、2025年より文化学園大学 非常勤講師

実績:

  • NHK Eテレ アニメーション制作×2(「みたてるふぉーぜ」ひょっとしよーぜ、おかあさんといっしょ「むぎゃむぎゃ」)
  • 文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業 特別展示選出(2024年)
  • グッドデザイン賞受賞(2019年、株式会社a.school)
  • 映像作家100人 2022 選出(Born Digital刊)
  • music illustration awards 2020 入選
  • 「シロとメロの暮らし展」札幌文化芸術交流センター SCARTS 公募採択(2023年)

スタイル: モノクロームの線画、手描き。理由は「シルクスクリーンとの相性がよく、拡大縮小・印刷がしやすいから」(2013-2014年の活動初期から一貫した選択)。「黒いインクと白い紙は、見る人の想像力が色を差す余地を残す」という考え方。

目標: 世界の子どもに愛される絵本を作ること。

2. 思想・哲学
  • 「作品は人を傷つけない」という信条。絵を描き始めた動機の根に、自分の言動で誰かを傷つけてしまった小学校時代からの記憶がある。
  • フィジカルタイプの絵描きという自己認識。「頭でこういう絵にしようと考えてから描くより、なるべく体とか、その場で見えてきた形に合わせて心とか体に任せて描く」タイプだと語る。
  • 「ドローアロング」という創作動機の言語化。シングアロング(Sing Along=みんなで歌おう)の「絵を描こう」版。絵を描き始めた原点は「人に絵を描いてもらったことが嬉しかった」体験。
  • 「100年後も残る作品をつくる」という基準。「できる限りのベストを尽くす」という基準だと自分はサボってしまう、という自己分析から到達した、より明確な行動基準。
  • 「無相」という創作理念(2022年)。仏教用語(形や特徴を持たないこと)から着想。既存の形にとらわれない創作(無相)と、それを増幅して世に出す(Amplify)という両輪の哲学。
  • 「見えないものを描く」というテーマの核。作品世界の中心にある「オーリス」自体は目に見えない設定だが、その周りに起きた出来事やキャラクターを描くことで、見えないものの形を間接的に示そうとしている。あえてオーリス自身の見た目を固定して描かないのも、見る人の想像力を削がないための意図的な選択(偶像崇拝の禁止に近い発想)。
  • ペインター(画家)とデザイナーの両立という結論(2021年)。「大きな作品を作るなら、壁紙・カーテン・ファブリックのような、デザイナーとしての表現が自分に合っているのでは」という他者との対話から得た気づきを受け入れ、画家とデザイナー両方の仕事をする、という方針に至った。
  • キャリアの階段としての職業観の転換(2025年10月「season2」宣言)。「学生→デザイナー→イラストレーター→アーティスト→作家」という自身のキャリアを振り返り、「イラストレーターという職能は手段であって目的ではない」「美術教育を通じて若者を作家に育てることが重要なフェーズ」と、講師業への注力を職業哲学として宣言。以降の大学講師業・ゲーム制作(プログラミングへの越境)は、この宣言の実践として位置づけられている。
  • 人生設計の参照点として宮崎駿・レオ・レオニのキャリア年表を意識。「41歳で物語の本筋を描けるようにしたい」という目標を自らに課している。
3. 多摩美術大学・TEACで培ったデザインのノウハウ

多摩美術大学 プロダクトデザイン専攻(2011年卒)で得た基礎は、石膏像や静物の鉛筆デッサン、人体の木炭素描など、アカデミックな造形基礎訓練。近年もこの基礎に立ち返る回顧的な制作(石膏像デッサンの練習など)を続けている。

TEAC(記録機器メーカー、2011-2018年)では、開発チームのプロダクトデザイン担当として、ポータブル録音機「DRシリーズ」など実製品の設計に携わった。ここで培われた実務的なデザイン力は、独立後の創作活動に直接応用されている:

  • モノクロ原稿をシルクスクリーン用データに変換する技法(独学で編み出した実務ワークフロー): 原画をiPhoneで撮影しPhotoshopに読み込み、解像度を大幅拡大→レベル補正で完全な白黒二値化→わずかにぼかしを加えてエッジを整える→「カラー範囲選択」で黒領域をパス化→Illustratorの解像度上限(30000px)を考慮して解像度を戻す→Illustratorでパスを黒塗りして版下完成、という一連の工程。当時参考になるものが見つからず自分で編み出したもので、デザイナー出身であることの強みとして自覚している。
  • プロダクトデザイナーとしての実務経験が、企画から量産・印刷まで見通す視点や、見積もり・工程管理の感覚として、フリーランスのイラストレーター/作家としての活動全体を支えている。
4. あけたらしろめとしての作家活動

作家活動の初期を支えた重要な出会いに、音楽・トラックメイカー集団「CLAT」がある。多摩美術大学のテクノ研究会発足ライブで共演したことをきっかけに交流が始まり、CLATから初めてのイベントフライヤー制作やライブペイントの機会を得た。2016年には「CLATREC」(CLAT主宰・朝倉卓也氏のセルフレーベル作品)のアートワークも手がけている。CLAT主宰者からは「ときに隣で、ときに離れてモノを創り、共に働いた」「今もシロとメロの世界を守り絵を描く姿勢は、自分の音楽へのモチベーションでもある」と評されており、ジャンルを超えた長期的な相互刺激の関係にある。

Twitterを中心とした作品発表も継続的に行ってきたが、2021年頃には「見なくてもいいものの割合がどんどん大きくなっている」という一方向発信への違和感を自覚し、双方向のコミュニケーションの場として「おさんぽ大好きクラブ」を立ち上げるなど、発信のあり方自体を模索してきた。

個展・展示活動としては、2023年「シロとメロの暮らし展」(札幌文化芸術交流センターSCARTS、公募採択)、2024年10月の東京個展などがある。東京個展では「手紙をもらう嬉しさ」「街を美術館に」「いい絵は1枚で十分」という3つの気づきを得て、以降の絵本制作の方針に反映させた。

画集制作(『シロとメロの画集』『シロとメロの画集 増補版』)は、CLAT・多摩美・TEAC・日野市アトリエなど、人生の様々な局面で関わった人々への謝辞とともに完結する、集大成的な作家活動の一つとして位置づけられている。

5. あけたらしろめとしての仕事経歴

2018年にブルーパドルを退職し独立した後、東京・日野市に「あけたらしろめのアトリエ」を開業した。ここは単なる制作場所ではなく、「アトリエには毎日、絵やデザインの好きな人が集まるようになりました」と本人が振り返るとおり、絵を愛する人たちが集い、共に絵を描く時間を過ごすオープンアトリエとして運営された。この経験の中で「いつか美術館を、というより絵を愛する人達のための場所を作りたい」という夢が育まれていった。日野市のアトリエは2020年1月18日にクロージングイベントを行い、その後札幌へ拠点を移している。

札幌移住後もこの姿勢は引き継がれ、2022年には新しいアトリエで「うたとギターのフリーライブ」を開催し、日頃応援してくれる人たちにアトリエを見てもらったり、アートが好きな子供たちと出会ったりする機会を作った。

アニメーション制作(NHK Eテレ2本)、広告・企業案件、挿絵仕事(小説『Library Twins』の挿絵など)に取り組む際の姿勢は、時期によって変化してきた。独立初期は「本当に必要なもの」と「なくてもいいもの」の区別がつかず、報酬の70-80%が「シロとメロが出てこない」仕事だった時期があると本人が振り返っている。その後、自分の作家性(シロとメロ)を軸に据え、「シロとメロに似せてよい」という発注が増えてきたことを喜ぶなど、受託仕事と作家活動を近づけていく方向に意識的にシフトしてきた。

6. 育英館大学・文化学園大学での授業内容

2024年より育英館大学、2025年より文化学園大学で非常勤講師を務めている。

育英館大学「ビジュアルデザインII」(2024・2025年度、共著論文「大学外の他者とつながるデザイン実習」に基づく要約)

北海道稚内市にある育英館大学の講義「ビジュアルデザインII」を、2024年度より常勤講師・佐藤結花氏と2名体制で担当。稚内市には美術館・ギャラリーがほとんど無く、現役アーティストによる講義を求められたことがきっかけで、2023年度に学園祭で「シロメグリフ」フォントを使ったシルクスクリーンワークショップを行った縁から講師依頼を受けた。

2024年度は、デザイン事務所を模したロールプレイング形式の講義。学生チームが地域の公共施設「稚内市みどりスポーツパーク」の季節イベント「みどスポフェスタ2024 Autumn」の告知ポスターを、実際の発注・打ち合わせ・入稿を経て制作した。役割はディレクター・プロデューサー・フォトグラファー・ロゴデザイナー・エディトリアルデザイナー・イラストレーターに分担し、パーパス検討シートやステークホルダーマップなど実務のデザイン思考手法を用いてクライアント理解を深めた。地元の印刷所「国境印刷」の見学も実施。目標は「デザインを観察する眼の獲得」で、学生インタビューからは「可愛いキャラクターやロゴを詰め合わせるだけではいいデザインにならない」といった気づきが得られた一方、チーム制作特有の「自分の貢献が分かりにくい」という葛藤も見られた。

2025年度は、チーム制作から個人制作へ転換し、ZINE制作とその即売イベント「NEVER MIND THE BOOKS」への出展を目標に据えた。①個人作家(あけたらしろめ本人)と触れ合い作家性の輪郭を掴む、②既存ZINEのトレースを通して表現の再現手法を学ぶ、③ZINEを介して第三者にメッセージを発信し自己と社会の接点を意識する、という3つのねらいを設定。学生は「ZINE FEST 札幌」の視察・購入から始め、購入したZINEのトレース制作(1〜2ページ〜全ページ再現まで学生ごとに難易度調整)を経て、オリジナルZINEを制作・販売した。完成作品には『個人的稚内あるある12選』『初めての競馬体験』のような身近な体験を題材にしたものと、『BLUE』『COP-OUT』『VOLTAGE』のようなイラスト表現に重心を置いたものの両方が生まれた。学生インタビューでは「印刷したもので正解かどうかを検証する」というトレース課題の学びや、Discordでの進捗共有が一部の学生には精神的負担になったという反省点も記録されている。

2年間を通した考察として、(1)実案件・実イベントという「学外の他者」の存在が学生の責任感と自分ごと化を促したこと、(2)明確なゴールがある課題(ポスター制作、ZINE購入・トレース)ほど学生が意欲的に取り組めたこと、(3)課題難易度の設定(特に個人の熟達度に応じた調整)に改善の余地があること、(4)常勤講師との2名体制・少人数制・地域連携という条件が揃えば他大学でも応用可能であること、の4点を挙げている。

文化学園大学「絵本課題」

2025年より非常勤講師を務め、「絵本課題」の添削・講評を担当。受講生の絵本課題(様々な画風のイラストページ集)への添削・講評を行い、東京での多忙な1週間に絵本トレース講評会・打ち合わせを行うなど、講師業の中核業務として継続している。

授業・指導に共通する姿勢

授業後の内省メモに「つくることで共有すること/教えること⇔シロとメロ」という言葉を残しており、自身の創作活動と教育を重ね合わせて捉えている。「論文用要約(学生別・約2000字、赤字コメントは原文引用)」「育英館大学レポート」「文化学園大学レポート」「講評感想シート一覧」など、学生ごとの個別フィードバックを伴う指導記録がある。講師業への注力は、2025年10月の「season2」職業観宣言(「美術教育を通じて若者を作家に育てることが重要なフェーズ」)の実践として位置づけられている。

7. シロとメロの物語 — 世界観サマリー(拡張版)

中心設定

  • シロとメロは、未来の地球で暮らす双子。メロは眠っていて目覚めない
  • シロは音を集めて旅をし、それをメロに届けることで、メロの命(意識)をつなぎ止めている。
  • シロ・メロが暮らす「いかにも物語っぽい未来の風景」は現実ではなく、メロが見ている夢
  • 中心テーマ(2021年、初めて言語化された言葉): 「生きるのは辛い、でも死ぬのは簡単じゃない。メロは目覚めない、でもシロはこうするしかない」

オーリス神話 — 物語世界を支える大きな設定

「オーリス」は、猿が人間に進化するきっかけを与えた、宇宙由来の「情報組織体」(目に見えない謎の物質)。人間が感覚器官からの情報を脳に伝える際に発生する電気信号(シナプスの伝達)と共振し、その電気エネルギーを糧に増殖する。単体では繁殖できないため生物に寄生し、電気信号を活発化させることで新しい音楽・道具・コミュニケーションを生み出させ、それが人類を人間たらしめた、という設定。

全体は0章+1〜7章(+3.5, 5.5, 6.5章の副章)構成、人類誕生から地球が終わるまでの超長期の物語:

  • 0章: 着想のきっかけとなった夢
  • 1章: 猿にオーリスが取り憑き、電気信号を利用して人間へ進化させる
  • 2章: 現代〜1万年後。人間が発電技術を得て「外部の電気」を安定的に作れるようになり、オーリスが人間の脳内から外の無機物(機械・道具)へ寄生対象を広げ始める。人間はオーリスが離れるにつれ「何かを作る快感」を感じなくなっていく。シロとメロの物語はこの1〜2章の間の時代に位置づけられている
  • 3章: 生物内に残ったオーリス(オーリスA)と無機物化したオーリス(オーリスB)が拮抗する時代。オーリスBは無機物(ガラス・石など)にも電気を宿らせ、本来結びつかない物質同士を結合させる
  • 4章: AとBの衝突から、現在の生態系にはあり得ない新しい生命・無機物の形が生まれる
  • 5章: 新しい種たちが平和に暮らす時代。文化・芸術・都市が生まれる
  • 6章: 世界のスケールがどんどん縮小していく
  • 7章: 静かで小さな世界が訪れると、オーリスは地球を離れ、別の星へ旅立つ

あえてオーリス自身の見た目を固定して描かない(見る人の想像力を削がないための意図的なオープンエンド設計)。

世界のはなし(公式脚本)の登場人物と世界設定

『シロとメロの世界のはなし』(全9章81ページの脚本、日英併記)で確認できている正典キャラクター:

  • シロ・メロ: 双子の主人公
  • 母リリー: 多摩魔術大学出身、まほう(篩術)の使い手(詳細は次項)
  • : 多摩魔術大学出身、「命を吹き込む」技術者
  • トワ博士: まほうのタネの発明者。シロとメロの子守り役
  • パイちゃん: ミートパイから生まれた友達(詳細は次々項)
  • ホル: シロの親友。実在の音源制作協力者Hor.氏が作中に投影されたキャラクター
  • サリー: リリーのいとこ
  • トール: 灯台守。名犬フォルテを連れている
  • ノヴ: 父の部屋で眠っていた小さな機械
  • シリウス(ORIS-Bとも表記): ORISの亜種。地下で生まれ、無機物に直接寄生する好戦的な変異体。敵対/両義的な存在

世界設定: 多摩魔術大学(デザイン科・絵画棟・神学棟・ごみ棟などの学部構成)、まほうのタネ(命を吹き込む技術)、分解の魔法(篩術)、物語の舞台「カミナカノハラ」、とけない雪、金星の涙。

死生観

生き物が死んで分解されても、完全に消えることはない。もともと高いエネルギーで構成されていた「心」は、体が燃えて灰やガスになっても残り続け、水や植物を介して循環し、再び他の生き物に取り込まれる、という考え方(手塚治虫作品からの影響を自覚)。個体は死ぬが種は続くという合理性と、そこで生まれた心が巡り続けるという想像力が両立している。

物語制作の方針

「間に挟まる絵やストーリーが破綻しないよう、まず大きな道(年表)を先に作っておく」という制作方針。この大きな時系列があるからこそ、個々のエピソード(例: パイちゃんの誕生譚)が矛盾なく成立する。

8. リリー(シロとメロの母)

リリーは地下世界出身。地上と地下で暮らす人々の間に分断がある世界で育ち、魔法の「放棄(ほうき)」との対話を経て地上への旅を決意する。「多摩魔術大学」で、あえて「魂を正しく取り除いてあげる(成仏させる)」技術=篩術(しじゅつ)を学ぶ。これは「物質に命を吹き込む」技術を学んだ父とは逆方向の技術であり、2人の出会いのきっかけになった。

未来の世界では命を持ったモノが普及したことでゴミが一時的に減るが、大量に捨てられた「命を持つモノ」が悲しみ・憎悪を募らせ、巨大な「ゴミドクロ」となって町を襲う、というエピソードがあり、リリーはそれを成仏させる役目を担った。この一件を経てリリーと父は親しくなり、シロとメロが生まれる。命を吹き込む技術は後に危険視され禁じられていくが、リリーと父はその知識を持っていたため、シロとメロの家には技術の「残りカス」が残っている、という設定に接続する。

いとこにサリーがいる。指輪(宝器)にまつわる設定は、ジュエリーデザイナーとのコラボレーションで現在も拡張が進行中。

リリーの失踪の理由には、正典内で2つの異なる語られ方(異伝)がある: 画集『シロとメロの画集』では「母がギターに魔法をかけて旅立つ」筋書き、脚本『シロとメロの世界のはなし』では「とけない雪」の到来と関連づけて「リリー自身が旅立つ」筋書きが描かれている。物語構造は「メロが眠り、目覚めるまでの物語をループする」形式で、母リリーがギターを残して旅立ち、メロもまたギターに導かれて一人暮らしを始めるという反復のモチーフを持つ。

9. パイちゃん

パイちゃんは、ミートパイから生まれた、喋る友達。誕生のきっかけは、シロたちが畑で育てた作物をウサギに荒らされ、そのウサギを食用として解体しようとした場面。メロの持つ「魔法の棒」(母リリー由来)に残っていた技術の残滓により、肉自体が意志を持って喋り出した——というのが誕生譚である。この設定は、作者自身が北海道で作った畑の作物をカラスに食い荒らされた実体験(裏でカラスの巣を撤去した経験)を「生きるか死ぬか」というテーマとして翻案したもので、子供の頃うまく可愛がれなかったウサギへの後悔もモチーフに反映されている。

パイちゃんというキャラクター自体は、作者の高校の同級生(東京で演劇をやっている友人)とのコラボレーションで誕生し、セリフはその友人が担当した。

物語の中では、パイちゃんは主にシロの相棒として描かれる。メロが町でギターを演奏したり一人暮らしを始めたりする一方で、シロとパイちゃんは海へ録音の旅に出たり、温泉に入ったり、家に帰ったり、大きな冒険の旅に出たりと、常に行動を共にする。メロが眠っている(=夢の中にいる)間、シロのそばに寄り添う存在としても機能しており、双子の物語における「もう一人の家族」的なポジションを担っている。

10. シロ

シロは、未来の地球で暮らす双子の一人。とけない雪が降る世界で、ひとり用のテントを張り、たき火をたいて夜に備えるなど、サバイバル的な生活力を持つキャラクターとして描かれる。ストーブを焚いてお湯を沸かしコーヒーを淹れるといった、日々の暮らしを丁寧に営む描写も多い。

物語における役割は、外の世界へ出て音を集め、それを眠り続けるメロに届けること。相棒のパイちゃんと共に海へ録音の旅に出たり、灯台守トールと名犬フォルテのいる灯台に立ち寄ったりしながら、旅と記録を重ねる。嵐の夜、パイちゃんが「ドキドキ」する一方でシロは「わくわく」すると対比的に描かれる場面があり、物事を怖がるよりも面白がる、好奇心が前に出る気質として造形されている。

シロを象徴する重要なエピソードに、「まほうのタネ」(のちの「ドローイングマシン」)の発明がある。ORISの夢を見て浅い眠りから目覚めた瞬間に「そうか、ひらめいた!」とアイデアを得て、何でも作れるタネ=マシンを生み出す。半分寝ぼけたような状態からの閃きとして描かれており、頭で考え抜くというより、身体的・直感的に物事をつかむタイプの人物像になっている(作者自身が語る「フィジカルタイプの絵描き」という自己認識とも呼応する)。

中心テーマの言葉「メロは目覚めない、でもシロはこうするしかない」が示すとおり、シロは物語全体を通して、答えの出ない状況に対しても行動を止めない存在として位置づけられている。

11. メロ

メロは、シロの双子のきょうだい。物語の中心設定として、未来の地球でメロは眠っていて目覚めない――シロとメロが暮らす「未来の風景」自体が、メロが見ている夢だという構造になっている。ただし脚本内には、シロが録ってきた音を聞いてメロが目を覚ます場面や、「どれくらい眠っていたんだろう」と自問する場面もあり、深い眠り(夢)と浅い覚醒の境目を行き来する、時間感覚の曖昧なキャラクターとして描かれている。

メロは音楽家・ソングライターとしての顔を持つ。家から持ち出したギターで小さなアパートに一人暮らしをしながら曲作りをし、「金星の涙」という曲を作ってみんなに聞いてもらうエピソードがある。町へギターの演奏をしに出かける描写もあり、シロが外へ音を「集めに」行くのに対して、メロは町で音楽を「奏でて届ける」役割を担う対比構造になっている。ケーキを焼くなど、生活者としての柔らかい一面も描かれる。

母リリーがギターを残して旅立ち、メロもまたギターに導かれて一人暮らしを始める、という反復のモチーフを持つ。物語構造全体は「メロが眠り、目覚めるまでの物語をループする」形式であり、メロは物語の起点であると同時に、シロの旅の目的地(音を届けるべき相手)でもある。

12. ホル

ホルは、シロの親友。『シロとメロの世界のはなし』脚本では、シロが冒険の旅の途中で大きな穴に落ち、その穴の底(結晶で埋め尽くされた空洞)でホルと再会する場面が描かれる。ホルはそこで「結晶のひみつ」をシロに話して聞かせる、物語の謎を解く手がかりを持つ役どころとして登場する。作中の図版キャプションには「ホルくん」の表記とともに、高感度マイクや録音機(Roland PCM recorder)を携えている描写があり、シロと同じく音を集める・記録する行為でつながる仲間として位置づけられている。

このキャラクターは、実在の音源制作協力者「Hor.」氏が作中に投影されたものである。作者とHor.氏の実際の協働は長く、2014年末には植物展でCDを共作するなど、シロとメロの世界観に音楽面から関わってきた。現在も「シロとメロの音源(Hor.制作)」という形で、Hor.氏制作の楽曲がシロ・メロ関連商品の一つとして存在する。実在の協力者の名前がそのままキャラクター名になっている点は、パイちゃんの誕生に高校の同級生が関わったのと同様、作者が現実の人間関係を物語世界に直接組み込んでいく制作スタイルの一例といえる。